3days -満ちてゆく刻の彼方で-

Lass


紅葉した木々と澄んだ空気に包まれはじめた綾篠(あやしの)市。

市内の学園に通う「高梨 亮(たかなし りょう)」は、幼なじみである「藤見 たまき(ふじみ たまき)」と、代わり映えはしないが平穏で居心地のいい生活を送っていた。あからさまなほどに好意を寄せているたまきに対し、幼なじみ同士の気恥ずかしさ故か、態度を決めかねている亮。そんな『友だち以上、恋人未満』の2人の関係、そして平穏な街に変化をもたらす事件が起こってしまう。

2人の通う綾篠学園で有名な美少女、「柊 美柚(ひいらぎ みゆ)」が遺体となって発見されたのだ。学園内はこの事件の噂で持ちきりになり、様々な憶測が飛び交う。その中には彼女の身体がバラバラに刻まれていたとか、猟奇殺人犯が夜な夜な綾篠をウロついているとかいう、半ば怪談じみた話もあった。

上級生の美柚に密かな憧れを抱いていた亮も、強いショックを受け、また犯人に対して激しい怒りを覚える。たまきの心配をよそに、事件にのめり込んでいく亮。だが、学生という立場では力が及ばないところが多く、情報収集すらままならない有様だった。そんな不安と焦燥に駆られる2人に追い討ちをかけるかの如く、同級生の1人が飛び降り自殺をする。2人は、偶然にも「その瞬間」を目撃してしまうのだった。

糸口すら掴めぬまま、狂気が蔓延する世界に投げ込まれた2人。そんな非日常の中で、亮はようやく、たまきの深い愛情に気付きはじめる。やがて2人は互いを求め、肉体的にも繋がることを望むが……


 このゲームの売りはループです。3daysと言うタイトルが指しているように同じ3日をグルグルとグルグルと繰り返します。
 そのループ発生の条件が『主人公の死』というのが、これまた滅入る話です。しかし、4〜5回殺されれば殺されることに自然と慣れっこになります。主人公を始めとして登場人物が、ありとあらゆる方法で惨殺されるので、 そのキャラたちの死に様を見てぐへぐへと楽しむのもまた一興でしょう。テキスト描写もCGもそれほど大したことないので、その方面に強い嗜好を持っている方には満足できるモノではないかもしれませんが。

 他にも萌える絵によるグロテスク表現もゲームの売りでしょう。グロテスクな表現が含まれているゲームはリアルタッチなモノが多いですが、 3daysはリアルとは言い難い、今風の萌え絵なので、その萌え絵のキャラクターがガッツンガッツン殺されるというシュールなアンバランスさもまた面白いところです。 しかしグロを売りにしているわりにはそれほど目を覆いたくなるような酷いCGはないので、あまり過度な期待をしてると面食らうかも。臓器が出ているCGもそういくつもありませんし。

 序盤から中盤までは、主人公が理不尽に殺されてはループ、殺されてはループ…と、救いようもない展開ですが、このループ地獄を乗り切るとこれまた悪い夢のような展開が待っています。 どういうわけだか、街の小さな(?)猟奇殺人から、一気にスケールアップして魔術師陰陽師…果ては暗黒魔法四精(しせい)といったファンタジー要素が怒濤の勢いで加わることになります。 回想で主人公が鬼に変身(百鬼鎧骨格)したときは笑いすぎてゲロを吐くところでした。

 『冥王の鍵』暗黒魔法は健在か……」

 「何しろ、この身体で死者に溢れた新世界の王となるのだからなぁ。」

 四精もこんな狂った空間じゃ まともに言うことを聞いてくれない……」

 …こんな台詞を正気で言っている人たちとは何があっても拘わりたくないです。

 …なんで普通の猟奇殺人に留めておかなかったんでしょうか?こんなファンタジーノベルチックな展開はユーザーの大多数が望んでいないと思うんですけどねえ…。 こちらとしては「猟奇殺人+ループ」で十分なんです。あの深いんだか浅いんだかよくわからない設定には興味ないですけど。

 で、シナリオ以外の不満点も幾つかあります。無闇に高いゲーム難易度(25回ぐらい死んだ)、デッサンの狂ったCG、既読未読が怪しいスキップ、フラグ管理の甘さ(これは致命的)…etcetc。 明らかにデバックをまともにやっていません。パッチを当てないとクリアがほぼ不可能というのはさすがにどうかと思います。次回作はこれらの甘さを詰めてから発売して欲しいです。


キャラ別感想

藤見たまき

 知力のパラメーターを上げ忘れたメインヒロイン。
頭が鈍く見ていて痛いキャラな上、主人公にあざといほど媚びまくりなので、嫌われるか、好かれるかの二極端だと思われます。 因みに私は立ち絵が好きなのでこのゲームのなかではダントツ萌えですが。しかし、彼女のイベントCGはデッサンが狂っているものが多いのがちょっと…。

 シナリオでは柊美柚EDの彼女が最高に切ないです…。誰も取ることのない電話の呼び出し音が永延と続いた後、スタッフロールに入る演出は このゲームで一番好きなシーンですね。切なくとも美しい。

吾妻梨花

 眼帯自傷娘。
ゲーム二日目で飛び降り自殺をしてユーザーの驚かせてくれるパニック要因。
ベジータ様が憑いていようがいまいが、もともとヤバイ性格をしているので、彼女に萌えるのには困難を極めます。 …そういえば、彼女に絞殺される時はベジータ様が顕在していませんでしたよね。なのでベジータあるなしに拘わらず真性○チガイというキャラ。おっかないです。

柊美柚

 頭が長いセカンドヒロイン。
自分と主人公以外は顧みない節があるので、彼女もまた恐ろしい。死体として操られたとして体育教師をあそこまでミンチにする必要はあったのでしょうか?彼の人権はどこに? 容赦以前に情けが無さ過ぎです。 それに殺したときはまだベジータが憑いているだけの状態だと彼女は思いこんでたのに(まだ体育教師は助けられる状態)。とことんまで外道です。

吾妻瑠花

 ロリ要因。
グロテスク表現以上に彼女のロリ具合がソフ倫的にヤバイと思うんですが、気のせいですかね? 身長が128cmって…。シスプリの雛子より小さいじゃないですか!(132cm)。少し調べてみたところ8歳の平均身長とほぼ同じです。…け、けしからんロリ具合だ…っ!

千神奈々子

 据えられぬ膳。
Lassの前作『青と蒼の雫』の登場キャラ。前作で攻略できなかったので、ファンの要望に応えるために今作にも登場……かと思いきや、今作でも攻略できず。喰えず。 …何のために登場したのかサッパリです。ユーザーに対する小さな嫌がらせと取っても良いんでしょうか?

広原月子

 蘊蓄ゴス眼鏡。
彼女のうんちくがこのゲームのプレイ中に一番真面目に読んでいました。へ〜、ほ〜と思いっ切り感心しましたよ。そして最後の最後で中身がプリッとはみ出る大役を任されています。おそらく作中で一番えぐいCG。


 ファンタジー要素が入ってから、私のなかで急激にテンションが落ちましたが、柊美柚EDの切なさでちょっと評価があがりました。

 まさか世界の平和を守るような血なまぐさい展開からこんな男と女の痴話痴話なエンディングになるとは思いませんでしたよ。こんな胸を締め付けるような終わり方になるとは…。 ハッピーエンド至上主義というワケではないので、こういった展開は大好きです。たまきの携帯に亮の電話番号が残っていたのは、やはり亮も今までの日常に未練があったからなんでしょう…。
 個人的に次回作には陳腐なファンタジー要素を0にして、こういった切ない展開のシナリオがやりたいですね。


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