あやかしびと

propeller

▼はじめに(ちょっとしたレビュー)

propeller(プロペラ)第二作品。一作目のドタバタコメディと違い、バトルものの少年漫画をそのままエロゲにしたようなヴィジュアルノベル。 特に演出面が丁寧に作られている作品です。一番演出に力を入れている作中のバトルでは格闘ゲームのようにキャラクターのカットインが流れるように入り、 テキストでは表示されないボイスが入るなど、かなり力を入れています。 それに主人公をはじめとして、フルボイスなのも好感。もちろんキャラクター別でボイスをオンオフもできます。

テキストはかなり独特。
たとえば「〜〜だった。〜〜だった」といった同じ言葉を繰り返し使うような言葉遊びを多用しています。 かなりくどく使うので、読みやすいテキストとは言い難いかも。 私はこの手のば韻を踏んだ言い回しは好きなので、問題ありませんでしたが、簡潔で綺麗に纏まったテキストを好む人には少し辛いかもしれません。 それと三人称視点のバトルシーンでは、夢枕獏のような文章になるのはご愛敬ですね。

グラフィックは良好です。
原画はNitroPlusを(おそらく)円満退社した中央東口さんが担当。 今までは、どシリアスな作品しか手がけなかったので、多少の懸念もありましたが、全く問題ありませんでした。 グラフィッカー(塗り)が違うのも影響ありますね。でもまぁすずに狐耳が生えるのは、ちょっと引きましたが。耳が4つあることになりますし。 ほかに背景の少なさもちょっと気になりました。特に屋上と町並みの使い回しが多いのはいただけません。

音楽は問題ないのではないかと。
盛り上げるところでは、盛り上げ、ドタバタではドタバタ、日常では日常と、 うるさく感じるようなBGMはなかったと思います。ボーカル曲も男性ボーカルで作品の雰囲気に合っていました。 ボイスは問題なくキャラに合っていました。特に男衆が名演です。九鬼先生がサイコーに渋くて堪りません。 あー、でも、演技には問題ありませんが、すずの声がちょっと耳に付いたかな。


*ここからネタバレを含みます。要注意。

▼ルート別感想

飯塚薫

双七と薫が結ばれるまでの過程が、おざなりだったかなぁ。 初恋の相手というのもありますけど、唐突に薫に入れ込んでいる双七に違和感を憶えました。 すずを含めての三角関係(?)もかなり陰湿でドロドロしていたので、ここの部分は二度はプレイしたくないですね。 すずのやり口はえげつなさすぎなのもありますが、それ以上に納得がいけないところが多かったので。

やはり見所は、虎太郎先生でしょう。
このシナリオの主人公・双七は擁護できないほど虎太郎先生に喰われています。 どうしようもないほどです。虎太郎はドミニオン数人を何の問題もなく圧倒し、 ラスボスである九鬼をぶちのめします。双七は最後の最後でおこぼれを預かるだけです。 薫ルートで一番よかったところは全て虎太郎先生が持っていっています。 それと双七が敵の本拠地で3Pを始めたのは、頭が沸いているのかと思いました。

一乃谷刀子

前半の恋愛部分は少し退屈でしたが、後半のシリアス部分からが秀逸。主人公が、逢難に取り憑かれた後からこのシナリオの真骨頂でしょう。 逢難が双七の心を徐々に浸食していき、そして、逢難を受け入れて、ドミニオンを殺し、 九鬼を倒し、薫の心を侵し再起不能にするまでの過程は双七の視点だったのも相成って素晴らしかったです。 あと意外と馬が合っている双七と逢難が奇妙でおかしかったですね。 やはり極めつけはラストバトルの九鬼&刀子VS妖・双七でしょう。最強の相手だった九鬼が、味方に付くのは燃える展開です。

最後に逢難に魂を切り刻まれて力尽きようとする愁厳が、死にたくない、まだ未練がある、と心の中だけで吐露したシーンはちょっとキました。

トーニャ

日常の描写が一番面白いルールでした。愁厳と釣りにいったり、携帯電話を買いに行ったり、そんな何気ないイベントが面白かったです。 特に携帯電話のイベントは後に繋がる重要な伏線なのもグー。それと、このルートはことある事にトーニャにぶっ飛ばされるウラジミールが面白すぎ。

このシナリオはトーニャにとってあまりにも救いがないですね。 長年パートナーを組んでいたウラジミールを実の妹に殺され、その実の妹をトーニャ自身が手に掛ける。 そして、死んだ妹の気持ちを手紙で知るという。……なんですか、このどうしようもなさは。悲壮感漂い過ぎ。エピローグに至っても敵組織に突入って。

このシナリオでちょっと気になったのは、前振りもなくいきなり出てきたドミニオンと九鬼を倒すことが出来た双七です。 いくらなんでも、悪鬼羅刹としての力が弱まったにしても九鬼を倒すほど双七は強くないと思うんですが。

如月すず

最終シナリオ。恋愛に至るまでの過程はどのシナリオをよりも、綿密に書かれていました。

その反面、後半は一番荒唐無稽な内容です、問答無用に。 ロケッティアなマシンを背負って、高速移動する軍用飛行機に乗り込んだりするのもアレでしたが、 ラストバトルのゴジラVSメカゴジラ…もとい、最強の生物VS最強の無生物は口があんぐり開いてしまいました。 まさか大怪獣決戦が始まるとは。まぁラストバトルの途中でムービーに切り替わり、主題歌が流れてだしたのはお約束とはいえ、燃えましたけど。

ですが、個人的には主人公が人妖のままで、九尾を取り込んだ九鬼を倒すパターンが一番よかったと思います。 悪鬼から解放され、死にゆく九鬼と、九鬼を殺めた双七の師弟間の語らいは、作中屈指の泣き所です。 そのエピローグで、借金を返すためにおっちゃんの会いに行く胸に来るものがありました。


▼総評

この作品の一番よかったところは、主人公とヒロインだけに焦点が当たっているのではなく、サブキャラを含めて余すことなく活躍していることろです。 なので、居るだけで中身がスカスカの空気のようなキャラクターはただ一人さえいません。ストーリー上に於いて、なんらかの役割を持っています。 これだけの登場人物がいて、キャラを立たせるのは見事しか言えません。それと通常のバトルシーンは、主人公以外おざなりになっても仕方がありませんが、 この「あやかしびと」では戦闘能力があるキャラクターは全て丁寧に描写されています。そういう本来は省けるはずの細かい描写を描くことで物語りをより一層もり立てていました。 やはり、主人公を作中で最強に設定しなかったことが、サブキャラを含めて上手く立ち回れたのだと思います。

序盤をプレイした段階では設定ゲーだと思っていましたが、実際はそれだけではなく、キャラクターに心血が注がれた熱く滾ったキャラゲーでもありまりした。面白かったです。


back

index