CROSS†CHANNEL

FlyingShine


夏。

学院の長い夏休み。
崩壊しかかった放送部の面々は、
個々のレベルにおいても崩れかかっていた。
初夏の合宿から戻ってきて以来、
部員たちの結束はバラバラで。
今や、まともに部活に参加しているのはただ一人という有様。

主人公は、放送部の一員。
夏休みで閑散とした学校、
ぽつぽつと姿を見せる仲間たちと、主人公は触れあっていく。

屋上に行けば、部長の宮澄見里が、
大きな放送アンテナを組み立てている。
一人で。
それは夏休みの放送部としての『部活』であったし、
完成させてラジオ放送することが課題にもなっていた。
以前は皆で携わっていた。一同が結束していた去年の夏。
今や、参加しているのは一名。

そんな二人を冷たく見つめるかつての仲間たち。
ともなって巻き起こる様々な対立。
そして和解。
バラバラだった部員たちの心は、少しずつ寄り添っていく。

そして夏休み最後の日、送信装置は完成する―――
装置はメッセージを乗せて、世界へと―――



このゲームの凄いところは3つの大きな材料を、巧く料理が出来ているところだと思います。

『人類滅亡』『ループする世界』『群青学院の異常性』

そしてそれらをゲーム開始時では謎の状態にしてあるところが凄い。ゲームのテーマと言えるべきところを謎のままにしてあるので、ゲームの宣伝には苦労を要したと思います。



序盤の三時間はギャグとキャラ紹介、それと微かに引っかかる違和感…。
ここまでは普通の学園モノのさして変わりません。
主人公の躁病ようなテンションによる怒濤のギャグ、それと平行して発生する幾つかの謎。
そして明らかな異常事態が判明する日曜のラジオ放送―――

「生きている人、いますか?」

という主人公のセリフ…。
微かな違和感を内包した世界は、このたった一言で完全に壊れてしまうのです。

体験版はこのセリフのところでゲームが終わってしまい、発売まで悶々と日常を過ごしていました。あーもう、この先が気になって気になってしょうがなくて、 続きを自分で想像する始末でしたね。当初は『一五少年漂流記』みたいなサバイバルな話なのかな〜とか、色々考えていました。…実際は全然違いましたが。

――閑話休題。

そして完全に壊れた世界から始まる世界―――。
それは世界に新たな違和感を生みました。
人類が滅亡したことを前提にして物語は進みますが、何故か主人公は以前と同じような行動を取ります。
プレイ中に(???)と疑問符が生まれます。
「もしかして、人類が滅亡したことを踏まえた上でのOP前の世界なのかな?」とプレイ当時は、とんだ見当違いな事を想像していましたが…。

しかし、進めていくうちに物語は以前とは別の方向に物語は進みます。
…更に人類滅亡というショッキングな出来事が判った後でも、違和感―――謎が増えてく。
そして日曜日には以前とは明らかに違う結末……。

それからまた同じ『始まり』が始まるのです。

更に物語を進めて行き『世界はこの一週間を繰り返している』という事実がわかります。

…そして群青学院の異常性。

違和感を感じさせながら、謎のまま流れていく伏線。
…その伏線の意味を理解する度に身震いしました。


キャラ別感想

黒須太一

ゲーム本編の主人公で、狂人の中の狂人。
下ネタと豊富な語彙によるギャグには笑いました。
彼の本質は人の心を喰い、そして壊したいという二面性を持った人物です。
セクハラも本質を隠すための擬態なんですね。
セクハラという行為そのものは破壊衝動の片鱗のようなものですし。

「先輩ほど完璧なバケモノは見たことないですから。
 あなたは掛け値なしの精神異常者。
 狂人の中の狂人。狂える者たちの頂点です」

こんな事を後輩から言われる主人公はどうかと思いますな。
…まあ、言われるのに値する十分な行為をしていますが。
それでも本質的に理解できない人間を知ろうとする。

支倉曜子

完璧な人。
彼女の群青色は今ひとつよく判りませんでしたけど、極度の太一依存ですかね?
自分に対して恐怖を与える存在は、排除するか―――同化する。
後者を取ったからこそ彼女は自分の一部のように太一に対して献身をします。
そう劇中で説明がありましたが、それが彼女群青色なんですかね?


女性陣では二番目に好きなキャラです。黒髪長髪万歳。


宮澄美里

巨乳眼鏡な人。そして規律の人。
群青色がリアルすぎて困ります。高速道路で80km規制を守るタイプです。 ルールを守りすぎて、秩序を崩しますね。

彼女は作中でエロ要因だったんですかね?
妙にその手のイベントが多かった気がしますが…。
…アンチ眼鏡なので、ちと困りました。


桐原冬子

これまたリアルな群青色です。
誰かに依存しないと生きていけない、その手の人種は今の日本に多いです。
極度の依存と、孤立というツンデレ好きには堪らない設定ですな。究極のツンデレと言えるでしょう。

ハラキリ拳や妖刀ハラキリ丸が名字から取ったワケじゃなくて本当に腹を切ったのには引きました…。
ブラックユーモア過ぎです。それを普段から気にもせずに冬子に言っている太一って…。


山辺美希

いいキャラです。
作中で一番好きですね。
普段は太一のセクハラを受け流せるほど、協調性が優れているいますが、 実は自分大好き主義で、他人の痛みが全くわからないという、サイコパスな所がグー。

彼女のシナリオが一番好きです。
生まれついてのサイコパスなのに親友を何度も殺していくうちに、他人の痛みを知ることが出来て、健常に近づけましたし…。
…結局は、自らそれを破棄してしまいましたが。

TECHGIAN版の体験版の美希は面白かったなぁ…。
パロネタが多い本編でも流石に「はわわ〜、ひろゆきさ〜ん」はやれまい。


佐倉霧

普段は辛辣ですが、実は気が弱く人見知りが激しい。群青色は一番健常です。
「優れた観察力のため、人の悪意に敏感」
悪意に対する潔癖症といった感じですか。 『あまりにも健全すぎて不健全』ということなんでしょう。
ビジュアル的には一番好きなキャラです。


 面白いゲームでした。
2003年はもとより、これまでプレイした18禁ゲームで一番面白かったかもしれません。
パッケに「生きている人、いますか?」とモロに書いてあるのはどうかと思いましたが。

『人は本質的には一人で誰とも重なることは出来ないが、それでも人は人と寄り添い、重なりを求める…』


back

index