らくえん 〜あいかわらずなぼく。の場合〜

TerraLunar


カノジョ不在18年目の冬。
ちょっとだけ仲がよかった後輩の女の子に、彼氏がいるって知った。
別に好きだったわけじゃない。
なのに、なぜか胸の奥がもやもやしてる。
そして、受験失敗。
おめでとう、予備校合格(誰でも合格できる)。
桜が咲いたことなんか一度もない僕の人生。
それでもけっこう日々は楽し。
あの日までは。あの電話がかかってくるまでは。
あのとき、受話器をとらなければ。
僕はフツーでのんきな日々を過ごせたんだろう。


 『TerraLunar』の処女作である『しすたぁエンジェル』を開発したチームの作品。
『しすたぁエンジェル』とは超絶対御都合主義的恋愛妹アーカイブノベルといういかにも売れなさそうなタイトルとジャンルですが、実際に売れませんでした。 しかし、売れなかったゲームが必ずしもつまらないとは限りません。私は十本の指にはいるほど『しすたぁエンジェル』を愛しています。 というのも、『しすたぁエンジェル』はタイトルとは裏腹にゲーム自体は非常に丁寧な作りで、特に演出面に関してはこの『しすたぁエンジェル』を越すゲームは未だにないと言えるでしょう。
 そして、その『しすたぁエンジェル』を開発したチームが再び集い開発された作品『らくえん 〜あいかわらずなぼく。の場合〜』…つまらないはずがありません。駄作で地雷で開始10分で見限るような作品のはずがありません。

で、ゲーム開始10分で気づきました。このゲームはひたすらに最低だが、最高に素晴らしいと…。


 「堕落する準備はOK?」

 絵を描くこと以外に何の取り柄もない駄目オタ浪人生(主人公)が、ふとした事情で新規エロゲブランドの原画家としてスカウトされ、とことんのとことんまで堕落するというのがこの物語の始まり。

 『らくえん』の主点はあくまでエロゲー制作なので、登場人物の掘り下げが最低限です。てか、足りません。いち兄ちゃんって結局誰だよ?
登場人物を無理にほじくり返すより、ゲーム制作にウエイトを置いて登場人物同士の繋がりを魅せています。人物がいて状況があるのではなく、状況があって人物がいるスタンスなんでしょう、多分。漫画で例えるならば『燃えよペン』みたな感じ?

 で、このゲームの何が面白いのかと言うと、ジェットコースターのようなテンポの良さ、ボケっぱなしで説明無しのギャグ、決して冗長にならないテキスト、そして業界屈指の丁寧な演出です。 それら混ざり合い『らくえん 〜あいかわらずなぼく。の場合〜』を完成させています。

 …いやはや素晴らしいです。止まらぬ勢いでゲームをやり続けました。テンポもよく、区切りもよくゲームが展開するんですが、それでも休憩もせず続けていられます。 2chネタやパロネタが多いので肌に合わない人には厳しいかもしれませんが、このノリに波長が合えば全く苦にならずにゲームを進められますね。


キャラ別感想

千倉紗絵

 キャラクター

 THE・MEGANE!
このキャラクターを紹介するのにこれ以上適した言葉はありません。 付け加えるなら眼鏡で腐女子。ゲームではシナリオライターのバイトとしてナームスに加わります。シナリオによってですが。
 メインヒロインの位置にいるのか、いないのかサッパリなお方。全体的にプレイした感じ、総登場時間もそれほど多くはありません。 シナリオがこのゲームのメインであるルートという感じも特にありませんでした。パッケでは前面にプッシュされているんですけどねぇ。パンツ見えているし。
 おそらく売れないであろうこのゲームですが、売れない最大の原因に彼女が噛んでいる気がしてなりませんね。パッケを手にとってこの眼鏡(+パンツ)を見て買おうと思う輩はいるのか些か疑問。 ……購入した私に言わせてもらえば、前情報無しにこのゲームをパッケだけで買う人は酔狂の域に達しています。

 私個人の感想としては嫌いにも好きにもなれないそんな存在感が希薄なお方でした。アンチ眼鏡の私でさえ、空気と同等でした。

 シナリオ

 寝取りルートとノーマルルートがあります。ノーマルルートではエッチシーンでキングクリムゾン現象(すっとばし)が起きてしまい、 本当にヤったのかヤってないのか、わからなくなってしまうので、寝取りルートが正規ルートなのかな?  

美柴可憐

 キャラクター

 身長130cm。パーソナルデータとしてはナームスの社員でグラフィッカー。やらせればなんでも出来る人(やらないが)。 見た目はとことんまでロリですが、言動がとことんまでロリとはかけ離れています。たまに語尾に「にゃー」と付けたりしますけど、萌える要素は0。むしろちょっとむかつきます。 そんなこと以上に美柴可憐という人物は男前です。このゲームで一番格好いい人。台詞台詞が様になっています。このゲームを象徴する「堕落する準備はOK?」も彼女の台詞ですし。
 数少ないユーザーの中で人気投票をやったら、おそらく彼女が一番になるでしょう。

 シナリオ

 シナリオは全ヒロインのなかで一番突飛。オランダのすげえ会社のすげえお嬢様ということが判明したり、しなかったり。いや、するんですが。まぁそんなことは瑣末事です。 ひたすらに男前な美柴可憐ですが、彼女自身のシナリオも一番熱く男前です。一度解散したナームス一同が、借金をこさえてまで再び集うイベントにはお約束ながらもちょっとウルっときました。 カントクがまた事故るというオチもありましたし(笑)  

御守みか

 キャラクター

 見た目と性格のギャップに一番驚きました。人物紹介の範囲ではもっとクールで知的な人だと思いましたよ。 一番近いキャラクターをあえて挙げるなら「あずまんが大王」の大阪ですかね。外見と性格は似ていませんが、間延びした関西弁というしゃべり口調はそっくりです。後、少し天然なところも。
 ヒロインの中で一番美人なキャラとして扱われていますが、流石オタだけあって身だしなみには気にしていません。さもなきゃ本人だけは格好いいつもりでいるという典型なのかもしれません。 ラフな薄着に男物のフライトジャケット(MA-1)を羽織っているというアンバランスな格好をしています。ですが、私はそのアンバランスさが良いです。男物のYシャツに通じるモノがありますよ。いや、ホント。

 シナリオ

 最後のオチには驚かされました…。究極のメタをやってくれます。一体どこまでが本当なんでしょう。現実での正規ルートはみかルートなんでしょうね…。 そしてエピローグの潔いまで締め方は狂おしいまでに素晴らしい。痺れた。彼女のシナリオに限らずこのゲームのエピローグの閉め方はホント、クールで格好いいです。  

亜季

 キャラクター

 主人公の妹。双子の妹。中学生ではなくΦ学生。一カ所だけ○学生の「中」にピーッ音ががかぶせてないところがありますが、Φ学生。主人公が18歳なのに妹が18歳以上ってどういうことよ? そしてよくフルメタルジャケットのハートマン軍曹ネタで盛り上がったりしている。「マスかきやめ! パンツ上げ!」
 ソフ倫規定により、当然ながら義理ですが、杏と亜季が生まれる前後に両親が再婚しているので、精神的には限りなく実兄妹です。

 憎まれ口は叩きますが、冗談の範囲ですし、主人公が言うほど生意気ではありません。つーか、萌え。極めつけの行動派。作中でも動かないと止まっちゃう畑の人と言われている。

 シナリオ

 エロゲ声優に挑戦したり、親が離婚したりといろいろと忙しいシナリオ。まぁ親の離婚は非常にあっさりしていますが。 ゲームの終盤に杏のことをお姉ちゃんと呼ぶところはちょっと良かったです。杏シナリオでは割と早めにどっちにが姉でどっちが妹か判明するのですが、他のシナリオではそのことに全く触れませんし、亜季シナリオではそこでのみ判明します。 …因みに私は亜季シナリオを先にやってので特をしたぜ。いやっほう。  



 キャラクター

 主人公の妹。双子の姉。中学生ではなくΦ学生。一カ所だけ中学生の「中」にピーッ音ががかぶせてないところがありますが、Φ学生です。主人公が18歳なのに妹が18歳以上ってどういうことよ? そしてよくフルメタルジャケットのハートマン軍曹ネタで盛り上がったりしている。「Good for you!Good for me!Mmm good!(俺によし!お前によし!うーん、よし!)」
 ソフ倫規以下略

 可愛いです。なんつーか、もう嫉妬が萌えです。にー兄ちゃん、にー兄ちゃんと甲斐甲斐しく主人公の側にいたり世話を焼いたりしているんですが、 他のヒロインの部屋に泊まりに行ったりすると露骨に不機嫌になるのが萌えます。むっちゃ可愛いですよ。

杏のルートだけではなく、どのルートだろうが最終的に主人公の側にいるという甲斐甲斐しさを見せてくれます。こんな妹がいるだけで主人公は勝ち組。

 シナリオ

 全シナリオで一番鬱なシナリオです。主人公の追い込まれ具合は相当なものでしたね…。本人にはっきりした自覚症状もなく、無意識に手首にカッターを押しつけ、無意識に自殺をしようとするのは本当にあり得そうで恐いです。 ギリギリ限界まで精神を抑圧され、うわべだけ元気でいようとするとこういった状態になってしまうんでしょうな…。

 妹シナリオですが、「一人の女の子として見て」というありがちで薄っぺらい台詞はなく、兄妹として近親相姦として認識し互いに堕ちています。まさに「堕落する準備はOK?」です。 近親相姦をテーマとしたシナリオではないので、兄妹としてヤるということは十二分に認識していますが、大した葛藤もなくすんなりヤってくれるので背徳感それほどありません。 ですが、話の焦点は別のベクトルに置かれているのに昨今の妹もののシナリオより十分に良くできています。  


 恥ずかしくなる恋愛譚はありません。ですが、青臭いまでの青春譚があります。鼻につく感動はありません。ですが、心に響く生き様があります。…そしてこのゲームにはオタクのオタクによるオタクのための人間賛美があります。


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