沙耶の唄
爛れてゆく。何もかもが歪み、爛れてゆく
交通事故で生死の境をさまよった匂坂郁紀は、
いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。
彼に親しい者たちが異変に気付き、
救いの手を差し伸べようにも、
そんな 友人たちの声は決して郁紀に届かない。
そんな郁紀の前に、
一人の謎の少女が現れたとき、彼の狂気は次第に世界を
侵蝕しはじめる。
主人公の匂坂郁紀(ふみのり)は、事故に遭い瀕死の重傷を負う。
奇跡的に一命を取り留める事ができたが、事故の後遺症で郁紀の目に映る世界は醜く歪んでしまった…。
…更に残りの聴覚、味覚、触覚、嗅覚をも視覚と同様に歪みが浸食し、全て五官が歪んだ認識を持つようになる…。
そんな中で、その視覚障害を始め、全ての誤認識から免れている少女に出逢う…それが『沙耶』…。
ニトロプラスの新機軸の作品でジャンルはホラーアドベンチャーです。
なのでニトロプラスといっても二丁拳銃とカンフーは出てきませんし、戦闘のプロもいません。
…それでも斧と鉄パイプで殺し合いをしたり、切りつめたショットガンをぶっ放したりはしますが…。
その辺はいつも通りニトロしています。
…ゲーム起動直後に『肢体を洗う』で付いていたようなグロぼかし機能を付けるか否かと訊かれます。
グロ好きな嗜好は無いんですが、ゲームを最大限に楽しむためにぼかさずプレイしました。
…ゲームを開始してから1秒でグロイです。奇妙な肉塊が奇声を上げているトコから始まります。
その後もグロい描写は常に出てきます。背景も臓器をひっくり返したような世界ですし。人間は肉塊です。
唯一沙耶だけは『正常』に見えますが、それすらも実は『異常』なトコロがステキです。
劇中にカニバリズムもあります。ソフ倫では絶対出せませんね。
…冷蔵庫に閉まってある臓器や人の手はかなりキました。
その辺を見るとえっちくて18禁というより、グロテスク描写の為に18禁と言ってもいいと思います。
ジャンルはホラーとなっていますが、あまり怖くないです。
ホラーはやはり、何を考えているかわからない存在や、存在そのものが謎で理解しがたいモノでないとあまり怖くはないと思うんです。
沙耶の唄は恐怖を与える対象である沙耶に感情移入をさせすぎたために怖いと思えません。
グロい描写は多々ありますが、グロ=恐怖という認識ではないと思うので、おぞましいとは感じましたが恐ろしいとは感じませんでした。
物語としての面白さはかなりのモノですが、ホラー作品としては失敗していると思います。
…特筆したいのは「狂気」の書き方が巧みさです。郁紀は狂っていますが、理解は出来ます。
物語を客観的に見れば、郁紀は狂人そのものですけど、視点を郁紀の主観で見れば郁紀の「狂気」は理解できる範囲なんです。
劇中で何よりも怖かったのは『理解できる範疇での狂人へと至る過程』――――そこが一番怖かったです。
…沙耶は萌えます。
ロリ属性はないつもりですが、萌えます。ですが、他のキャラは萌えるまでには至りませんでした。
作中に出てくる女性陣は沙耶以外はロクな目に遭っていませんね…(沙耶も選択肢によっては悲惨な目に遭いますが)。
喰われたり、おぞましい化け物に変えられたり、肩口から斧でバッサリされたりと可哀想なぐらいです。
…沙耶の正体? そんなの気にしません。
あのロリっ娘は一般の認識では筆舌にしがたい姿でも。
あの鈴の声が実は「ふ"み"ぃ"のぉ"りぃ""〜」といった断末魔といか人間の声帯では発音できないような声でも構いません。
郁紀がぶっ挿したところが、ぐちゃぐちゃのねばねばのぎゃばぎゃばでもいいんです。
…心には常にキャミソールを着た沙耶が微笑んでいますから…いや、マジで。
…ところで沙耶のあの耳は何でしょうね?
とても髪の毛の一部には見えません。猫の耳なのかな? 猫の名前を付けたらしいですし。
ゲームは短編でボイスを最後まで聴いても、4時間強で終わります。選択肢に至っては2つしかありません。
同じライターの作品である鬼哭街より短い気がしました。
物語の主軸を郁紀と沙耶で見てみれば純愛ですよね、SF純愛ストーリー。
郁紀と沙耶の異種間を超えた愛と感動、そして切ないお話…。
『それは、世界を侵す恋』というキャッチコピーが比喩とかではなく、本当にそのままの意味だったのには驚きました。
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