神樹の館
主人公、工月秋成(くげつ・あきなり)は、大学の友人の麻子(あさこ)と、山奥にそびえ立つ洋館、「真珠邸」へと辿り着いた。快く迎えてくれたのは、メイドの紫織(しおり)。警戒してか近寄ってこない双子の少女、斎(いつき)と伊美(いみ)。姿を現さない、館の主人。こんなにも巨大な館にもかかわらず、住人は、たったの4人。
もともとは、卒業論文のための資料を探しにやってきた、秋成と麻子。メイドの紫織が、二人を書庫に案内する。「よろしければ、しばらくお泊りになって、存分に研究なさってください―――」
夜。慣れない枕になかなか寝付けない秋成。どこからか聞こえてくる、少女の唄声。誘われるように、館の奥へと足を踏み入れる。そこには、座敷牢の中で悲しげに歌っている、和服の少女。傍らには、白狼。ぞっとした瞬間、メイドの紫織の声が。「屋敷の中は、危ない場所もございます―――冒険心もほどほどに」気がつくと、館の中。さっき見た光景は、夢か、幻か。
そうやって、秋成と麻子は、徐々に引き返せない領域に、足を踏み入れていくのだった……
『Meteor』の処女作である『神樹の館』。シナリオライターは田中ロミオ氏。
氏の代表作は去年他社から発売された『CROSS†CHANNEL』ですね。
他にもコンシューマゲームのシナリオを幾つかサブライターとして担当しているようです。過去には別名で作品を出していますが、まぁそれは置いておきましょう。
今作品はエロゲではあまり見られない三人称のテキストを主体としています。
文体も小難しい表現を使われたりもしていますが、ライターの実力もあってか、目に疲れることもなくすんなりと没頭できました。
山岳信仰や九十九神といった日本古典の情報が頻繁に出てきますが、物語の性質上、必要な知識なのでとくに衒学的とも感じることもありません。
プレイ当初はギャグを主体とした『CROSS†CHANNEL』とは全く違うタイプのテキストだったので少々面食らいましたが、それでもライターの芸の広さには驚かされます。
物語の舞台は館です。密閉された館モノと言うこともあり息苦しく感じられそうですが、冗長となるイベントが殆どないのでテンポ良く進めることが出来ました。
ストーリーは館モノらしく館の謎を解き明かすタイプです。分類的には伝奇ミステリーになるのかな?物語自体はありふれた―――オーソドックスなものといえます。
シナリオの特徴ですが、このゲームはエロゲらしくないシナリオです。エロが足りないという意味ではなく、何というのか、盛り上がりどころで盛り上がりません。
正しくは「盛り上げない」と言っていいでしょうね。昨今のエロゲだったら、終局となるイベントはくどいぐらいにテンションをあげますが、
この『神樹の館』はその手のイベントが起きても、スパスパと冗長にならずに進んでいきます。味気ないと言えばそれまでですが、最終ルートである竜胆以外は概ねそんな感じです。
私個人が狭いジャンルでしかエロゲをやっていないので余計にそう感じるだけなのかもしれませんが。
キャラ別感想
麻子
キャラクター
このゲームは舞台があってその上に登場人物を配置しているストーリーの典型なので、一部のキャラクターの除いて造型は地味です。
悪く言ってしまえばステレオタイプと言えるかも。
本当にエロゲらしからぬエロゲです。キャラクターの特徴を極端に際立てる真似は一切していません。
すみません、麻子を語る言葉が見つかりませんでした。世話焼きで大学の同級生?
シナリオ
一番初めにプレイしたルートなのですが、腕がもげたところでちょいとチビリましたね。
その一部のテキストを抜粋させて貰いますと…
その時の幸せがあまりにも甘美だったために、次の瞬間に起こった事は、この生において忘却の恩恵が与えられる事は一切なかろうと確信したのだ。
つかんで引き寄せようとした、麻子の手が。
―――ずぅるり、と。
工月の引いた力のままに―――
―――手応えは、酷く軽かった。
藁細工の人形の腕を引いたって、これほど軽くは。
引き抜けまい。
全てに諦観していた麻子を工月の言葉と身体の説得でようやく良い方向に持ち上げておきながら、「腕がもげる」という変則的な落とし方は驚きました。
紫織
キャラクター
メイドさん。館全ての取り仕切るスーパーメイド。
主人公・工月と同じく古書を読むのが好きで、これまた工月と同じで自分を卑下するタイプ。
そして何より乳がゴムマリみたいで怖い。ここまで来ると奇乳レベルですよ。足下なんかが見えないと思うんですが。…なんというか、こち亀チックな乳です。
シナリオ
館の謎の全容が朧気に顔を出すシナリオ。一番初めに彼女のシナリオをプレイすることはおすすめ出来ません。
主人公が館の主人になるバッドエンドが音楽と相成って怖いです。TRUEENDは二つとも幸せな終わり方をするのに。
斎・伊美
キャラクター
ライターの田中ロミオ氏はロリに信仰があるようで、少女の描写に神懸りを見せています。
ロリを書かせたら決してステレオタイプにはなりません。子供特有の無邪気、直感的な聡明さを書かせたらピカイチでしょう。そしてなりより萌えますね。
私自身は病的なまでの妹属性を持っていることは自覚していますが、ロリコンの自覚はないつもりでいるのにその自信がこの頃揺らいできました。どうしてくれよう。
シナリオ
双子のシナリオは難解です。
このゲームはテキストは難解で、ストーリー自体はオーソドックスだと前述しましたが、この双子のシナリオは合点が行かないところが幾つもあります。
特に双子がヒトガタに戻った後に何故工月が館の主人のような扱いを受けているのかサッパリ。そして、この辺りの時間の流れもサッパリ。
シナリオの見所は「爆 ぜ た 石 榴」…ではなく、やはり「杯」のだまし絵でしょう。
あれには肌が粟立ちました。うまいなー。ついでに石榴でも粟立ちました。
竜胆
キャラクター
神樹の精霊だとかで、最初は人外キャラらしく、飄々としていてつかみ所がありませんが、
彼女のシナリオでは意外と素直な面をみせたり初々しいところを見せたりと可愛いです。
例えを出しての言葉遊びが好きらしい。
シナリオ
どういうワケか最終のこのシナリオだけ我らが工月君がちょっとおかしいです。
「な、なんだとう」と子供じみたことを言ったり、竜胆の鼻に細くしたティッシュでくしゃみをさせたりとちょっと愉快なキャラになっています。
老けた考えを持っている工月ですが竜胆という自分より老熟した相手にはへりくだってしまうのでしょうか?
竜胆とにゃんにゃんな関係になるためには麻子、紫織、斎と伊美を次々と朽ちていくのを、見捨てていかなければならないのは心苦しいです。
ですが、その辿り着く先がまごうことなきHAPPYENDなので気持ちよく『神樹の館』のグランドフィナーレを迎えることが出来ます。まぁまさか工月も一発で身篭もるとは思うまいて。
以下日記より抜粋
Sun. 04.8.8
『神樹の館』体験版(Meteor)
『CROSS†CHANNEL』の田中ロミオ氏がシナリオを担当しているMeteorの第一作目『神樹の館』の体験版。
体験版のプレイ時間は3時間程度。双子のひとりである斎シナリオの序盤までプレイすることができます。
…ざっと最後までプレイした感想なんですが、かなり期待が持てます。館のみが舞台ということもあり、窮屈になりがちですが、シナリオの密度が高いのでさして息苦しさを感じません。
テキストは『CROSS†CHANNEL』のおちゃらけたテキストとは全く違い、三人称でガチガチなテキスト。
使われている漢字もルビが振られるほど難しいものが多いです。比喩的な表現も多いですし、
注意深く読まないと理解できない文体も多いんですが、圧倒的な筆力でだれることもなく読み進められます。
それとキャラクターCGに関して何ですが、乳が気持ち悪いです。ゴム鞠のような不自然な質感がある乳です。
…そろいも揃ってシリコンでも入れているんでしょうか?ちょっと萎え。
ロリ担当の双子は未成熟なので、気持ち悪い乳をしていなかったのが、せめてもの救いでした。
キャラクターに萌えるようなゲーム内容ではないんですけど、斎・伊美の双子は可愛いです。萌えますね。
んー、性的に見るような感じではなく、純然で邪な気持ちを抱くことなく可愛いです。…こう書くと余計にロリ野郎みたいですね!うはは!
来月発売のモノではダントツで期待作。発売日がワクワクするほど楽しみになってきました。
Fri. 04.9.24
『神樹の館(Meteor)』購入
今日は『友達以上恋人未満』を筆頭にいろいろと出ましたが、
それらには目をくれずに私が目を付けたのは『神樹の館』です。
シナリオ担当は『CROSS†CHANNEL』で名を馳せた田中ロミオ氏。一説では『家族計画』の山田一氏と同一人物だと言われていますが、まぁそれは置いておきましょう。
もちろんこの作品を選んだ動機はライターのネームバリューです。ミーハーですから。
作品紹介を見れば判りますが、氏の今までの作品と相当毛色が違います。館モノです。そういった舞台設定の雰囲気に合わせてか、テキストはエロゲではあまり見ない三人称です。
エロゲでの三人称テキストは敬遠しがちですが、氏の圧倒的な筆力からかグイグイと物語に引き込まれます。
それにエロゲにしてはガチガチで難しい語彙が使われているテキストですが、漢字にはルビも振ってありますし、難しい単語も文章の前後で何となく意味も理解が出来るのでそう疲れずに読むこともできます。
現在の進捗状況は大学の同級生である麻子をクリアしました。ファーストプレイに掛かった時間は6時間程度です。
ただし音声を一度も飛ばさずに読んだので、飛ばしてプレイすると4〜5時間で終わると思います。
シナリオの感想は後日感想としてまとめて書きたいと思います。明日明後日にはコンプリート出来そうなので。
攻略のネタバレ
シナリオ分岐はおそらく一番最初の選択肢でしょう。残りの選択肢はさして意味のないものか、バットエンドに直結するものです。
館の移動マップは単なる虱潰しです。移動マップでシナリオが変わると言うことはないと思います
現在は館の使用人である紫織シナリオをプレイ中。…乳がゴムマリみたいで引きますが、キャラクターの造形はなかなか好きです。
ステレオタイプなメイドキャラの性格をしていますが、それでも何とも言えない魅力を感じます。乳以外は。
ロリ担当の双子は最後に取っておきます。おいしいモノは後に残すタイプです。
『神樹の館』はそこらかしこで人を選ぶと言われていた『CROSS†CHANNEL』以上に人を選ぶ作品です。
萌え萌えーなキャラもいないですし、エロエローな濡れ場もありません。それでもエロは今までの田中ロミオ氏の作品と比べてるとえちぃ方ですが、
まだ実用レベルには達していないと思います。
やはり見所はテキストでしょう。まぁゲームのテキストとしてはちょっと行きすぎた気もし否めませんが、
作品の雰囲気と合っていますし、何と言っても「読ます」テキストです。私個人は活字慣れをしていないので辞書を引きながらのプレイでしたが、それもまた一興。
これでもし同じストーリーでぺらいテキストだったら単なる駄ゲーに成り下がりますね。
エロゲテキストの円熟の境地を垣間見せてくれた―――そんな気にさせてくれるゲームでした。
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