ゆのはな

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主人公・草津拓也はバイクでの一人旅の途中、ゆのはな町で転倒事故を起こしてしまう。
拓也の乗せたバイクは道路脇に建ってた祠に突っ込み、祠は全壊、バイクも全壊、主人公・草津拓也も全壊。
瀕死の重傷を負った拓也。だが、彼の死ぬ間際、神と名乗る少女「ゆのは」が現れ彼を死に体から救ってくれる。
しかし、その治療の見返りとして彼が破壊した祠の修繕費を払うように要求。
貧乏大学生である拓也はそんな金を持ち合わせていない。
金のないのなら借金をしろ。
しかし、土地神であるゆのはに縛られているため、拓也はゆのはな町から離れることが出来なくなってしまった。 そのため、消費者金融からは金を借りられない。
それならば働いて稼げ。
こうして草津拓也はゆのはに監視されつつ、ゆのはな町でバイトに明け暮れる日々を送ることになった。


えー、大体半年ぶりのエロゲの感想です。すっかり書き方を忘れてしまいました。
ネタバレ全開であるのにわざわざ導入部分の粗筋なんて書く必要があったのでしょうか。しかもわざわざ自分の言葉で書いています。きゃー、はずかしー。

で、久しぶりにプレイしたエロゲある『ゆのはな』ですが、かなり面白かったです。
全ての登場人物に嫌味が無い作品はやっていて気持ちいいですね。荒んだ心が潤います。 何よりプレイヤーの分身となる主人公・草津拓也が非常に気持ちいい性格をしていました。熱血で、情に厚く、騙されやすく、涙もろい。 ……清々しいまでの好漢です。陰々滅々としたダウナー系主人公も好きなんですが、こーゆう格好いいアッパー系主人公もたまにはいいですね。

もちろん攻略対象となるヒロインもよかったです。彼女たちのことは別途で後述します。
サブキャラも個性的で面白かったですね。一部、メインヒロインを喰っているキャラもいるほどです。 ゲームのシステム上、マップ上のバイト先を選んでそれを繰り返すだけという単調な構成ですが、彼らのお陰でマンネリにならずにシナリオが進行しました。

で、シナリオを映えさせたサブキャラのなかでも光っていたのが「しぶぞう」こと高尾渋蔵です。 名前の如く、渋いじじい。完全なギャグキャラとならず、締めるところでビシッと締めるイカシたじーさん。

ほかに目立っていたのは宇奈月由真ですね。攻略対象じゃないのがオカシイぐらいの目立つ存在でした。 まぁ彼女を攻略するには記憶喪失か、わかばが大変な目に遭わない限り無理そうですが。妄想エロトークや、思いっ切り口に出している奸計は面白すぎ。 ほかにイタリア戦艦オタクである春日直樹もギャグキャラとしていい感じでした。

とまぁ、サブキャラも含めて登場人物に嫌な奴が一人もいないというのは、緩急が必須である物語作りには難しい素材でしょうが、うまく調理されていました。 ライターの実力の高さが窺えます。流石としか言えません。

この作品はゲーム全体で見ても似通った日常(起床→バイト→就寝)を綿密に描写するという、 典型的なギャルゲ構成でしたが、立ったキャラクターと読ませる文章のお陰で苦痛なく進められましたね。


*ここから多少のネタバレを含みます。要注意。

キャラ別感想

伊東わかば

 キャラクター

風呂屋・華の湯の一人娘。ぽやぽやした性格で、天然。
趣味で絵本を書いていたりする。この絵本は物語のキーで、自身のシナリオのほかにも穂波の根幹にも影響を及ぼす。

ぽややんな性格ですが、物事の本質は決して見逃さない性格なので、意外と曲者です。 風呂に入っているときの音程が明らかにずれた怪しい歌が愉快。萌え。

 シナリオ

シナリオ自体に大きなイベントはありません。成長物語ですね。
伊東わかばが、ゆのはな町という纏まった世界だけではなく、町の外に目を向けるお話です。鬱要素は微塵もなく、終始貫徹でホンワカしています。

「世界って……ひろかったんですねー。
びっくりするくらい、泣きたくなるくらい、
笑い出したくなるくらい、ひろいんですねー」


このわかばのセリフにシナリオの全てが集約されていますね。
ほかの見所は、由真の奸計と暴走、シリアスになる由真ですな。由真はこのシナリオでしか、シリアスになりません。だからこそ、価値があります。

高尾椿

 キャラクター

おねーさんキャラ。
姉御肌で面倒見がいい。意外と嫉妬をしたりするのが、萌えどころなのかな。

 シナリオ

シナリオの途中、物書きということが判明して、スランプに永延と悩んでいるだけなお話。 拓也とえちぃことを酔いに任せてやってしまったことが、スランプの直接的な原因だと思われます。 ほかのルートでは悩んでいるようには見受けられなかったですし。で、シナリオの最後に拓也に「あなたは物語を書くことが好きな人だ!」 みたいな月並みな励まされ方をしたら、何かスランプから解放されてやんの。なんでやねん。

部分部分で面白いところはありましたが、全体で見るとそれほど……だったかな。 スランプで鬱々しているのが、異様に長かったですし。シナリオの骨組みがわかばシナリオと被っているところも多かったのもマイナス。

このシナリオで椿がライターの作家性を思いっ切り代弁しているので、ゆのはシナリオを含めてのちの展開が何となく読めてしまいました。

桂沢穂波

 キャラクター

オカルトにただならぬ情熱を燃やす不思議ッコ。 自分のオカルト好きは「死」に興味があってのものだとシナリオで説明されていましたが、 それで人間魚雷まで発展するとは思えません。素で好きだったのでしょう。

 シナリオ

エロい。とにかくエロい。まさに「ほなにー」、一人だけ回想エロシーンの数が多すぎます。エロエロです。 キスより先にフェラチオで、処女開通より先にアナルファックです。どうなっているんだ、このエロさは。

このルートはわかば、椿とはライターが違うせいか、少し毛色の違うお話でした。 バイトを繰り返すところは同じですが、ギャグのベクトルもシナリオのベクトルも他と違っています。 拓也を初めとしてほかのキャラクターの性格も大なり小なり違っていましたし。

エロさもなかなかですが、シナリオの緩急も一番激しかったんじゃないかな。このゲームで圧倒的に最長ルートです。 起承転結もしっかりとなったシナリオでした。拓也が一番主人公らしい行動をしましたし、盛り上がりどころでトコトン盛り上げ、 泣きどころで泣かせるという今ではベタベタなシナリオですが、レベルが高かったです。

エピローグの写真と、留守番電話メッセージはうまいやり方ですね。うまさに感動しました。

ゆのは

 キャラクター

守銭奴で食い意地の張っているかなり俗っぽい神様。
守銭奴であることも食い意地が張っているのも重要な理由があってこそなので、憎めるキャラではありません。 ゆのはな町の住人を狡猾な手段で金と食料を得るさまは見る人によっては引いてしまうかも。

私の一番の萌えキャラです。町の住人にはゆのはと拓也の関係を兄妹ということにしているからではありませんよ。まじまじ。 それと、わかば、椿シナリオでのお別れが何度見てもグッと来ますね。もちろん穂波のも好きですが。

 シナリオ

最終シナリオ。上気の3キャラを攻略しないとこのシナリオに入ることは出来ません。
ほかのキャラと比べて日常描写が薄い残念でしたが、ゆのはとラブラブになってからが滅茶苦茶可愛いのでベネ!(良し!)。 酔っぱらったゆのはが拓也に絡むところは、もうゴロゴロ転がってしまうほど萌えますね。その次の日の初々しい感じもベネ!(良し!)。 今までのルートでは拓也を本当に庇うことはなかったんですが、このシナリオだけ身の上を案じて庇ってくれるところが何カ所か合ってマジ可愛いんですわ。 これがあの守銭奴かと言いたくなるほどの可愛さ。

エピローグが見事と言わんばかりの予定調和でしたが、それでも思わず頬がゆるんでしまうほど幸せな結末でよかったです。現代の服を着たゆのはもメチャ可愛かったですし。


特に目立つところもありません。逆に問題すらもない、綺麗に纏まったゲームです。
グラフィックもボイスも音楽もシステムも全て良好。グラフィックに関しては立ち絵のバリエーションの豊富さがいいです。 シナリオも結構長く、コンプまでに20時間弱はかかります。……無理に粗を探すとなれば、穂波シナリオで誤字が多かったことと、ライターの差で文体に違いがあることかな。

幸せな気分になりたいときにやりたいゲーム。
基本的に似たようなネタを繰り返すようなギャグですが、総じてレベルが高いです。 顕著なんがゆのはの守銭奴ネタと食い意地ネタ。これはホントもうしつこいぐらい終始繰り返されますが、その点でもマンネリを感じませんでした。 ベタベタなネタなんですけどねー、文章の質が高かったので問題無しです。

この手のタイプは些か食傷気味と思っていましたが、かなりのめり込むことができました。オーソドックスな内容でも見せ方によっては面白いと再確認出来ましたね。


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