氷庫版

HOOK

▼はじめに

『LikeLife』という作品を端的に説明すると「モノが人になった!大変だ!」そんなドタバタ学園コメディです。
……頭が悪い説明になってしまいましたが、本当にこんな感じです。……もちろん私は好きですヨ?作品特有のノリを楽しめればそれなりに良作ですし。

例えば『「お兄様」と主人公を呼ぶヒロインに対して、(半調教気味に)メイド服を着せ「ご主人様」と呼ばせ、さあエッチ突入―――アアンご主人様』 そんなオタの欲望丸出しなシナリオさえもありマス。ホント、スゲエヨ。

会話のテンポの良さでこれに勝る作品はないでしょう。何てったって地の文(台詞以外の文章)が全くないですから。 地の文が無い代わりにその全て絵と音で補うという、まさにビジュアルノベルという特性をフルに生かしたゲームです。

……うん、贔屓に見て良作とは言えど、決して傑作と呼べる作品ではないですね。

『氷庫版』はそのゲームの中に登場する冷蔵庫が擬人化した氷庫さんというキャラがメインの作品です。一応は『LikeLife』のファンディスクでしょう。 ……登場キャラクターは氷庫さん、和っち、姫子の三人だけですが。それ以外のキャラは影も形もありません。

氷庫さんはその名が表すとおり、涼しげな風体と性格を兼ね、主人公だけにからかい混じりの辛辣な言葉をぶつけますが、その実お茶目なで素敵な見た目お姉さんキャラです。 『LikeLife』ではサブキャラクターだったんですが、HOOKの代表作である『オレンジポケット』を交えたキャラクター人気投票で攻略可能ヒロインを押しのけ見事一位になるという快挙を達成し、 その影響から氷庫さんメイン(というかのみ)のファンディスクが制作された、それが『氷庫版』です。

……書きながらふと気づいたんですが、この『氷庫版』というタイトルは『倉庫番』に掛けていたんですね。今の今まで気づきませんでした。

▼感想

ショートストーリー二本、アクセサリ、おまけがコンテンツ内容です。ボリュームはかなり少ないです。 ショートストーリーからおまけまでを30分足らずで終わらせることが出来ます。

『氷庫版』のメインとなるのはショートストーリーの「ある氷庫さんの一日……」です。

ストーリーをザッと書くと主人公こと和っちが、風邪を引いて学園を休むところから始まります。
家には氷庫さんを除いて誰もおらず、和っちを診てくれる人がいません。 和っちは氷庫さんに看病を頼みますが、テレビが見たいという理由から多少の手助けはしてくれましたけど、本格的な看病は断られます。 仕方なしに薬を飲み、また自室のベットで眠る和っち。しかし、病状は悪化する一方です。

苦しみに悶えるさなか、心配になった氷庫さんが和っちの部屋へと訪れます。 病状を悪くし苦しんでいる和っちを見て、氷庫さんは裸で和っちのベットに入り、冷え切った和っちの身体を自分の身体で温めます。 なにやら氷庫さんは電源(?)を切れば人と同じ体温になるそうです。

目が覚め、コトの状況に気づく和っち。裸の氷庫さんにすっかり反応してしまいそのままエッチ突入。

……コトを済ませた後、バタンキューと倒れる和っち(←当然です)。再び目を覚ますと氷庫さんに膝枕をされていました。 コトの後なので二人はもちろん裸。 氷庫さんはいつもの剣呑さを潜め「結未さんには内緒で、またしてくださいね」と。 愛想笑いをしながら、狼狽える和っち。「冗談ですよ」と微笑む氷庫さん。と、そのとき誰かが帰ってくる音が。END。


テキストから判断するとどうやらメインヒロインである宮里結未のEND後の話らしいです。

えー…、正直なところ、この「ある氷庫さんの一日……」が「面白いか?面白くないか?」と訊かれたら「面白くない」と答え、 「エロいか?エロくないか?」と訊かされたら「エロくない」と答えます。面白くなくエロくもないという、ノベルとしてもポルノとしても微妙な出来です。 元より大した期待はしていませんでしたが、まさかここまで辛いとは思いませんでした。

悪いと思った点を箇条書きで書くと……。

・短い。
・キャラ同士の掛け合いがない。
・テンポが悪い。
・エロくない。

とにかく短い。クリアまでに15分も掛からないんじゃないでしょうか。選択肢もありません。
そしてなにより『LikeLife』はキャラ同士の掛け合いが魅力的な作品なのに、その持ち味を全く生かしていませんでした。 「ある氷庫さんの一日……」の主演は和っち、氷庫さん…以上2名。
前述したとおり、『LikeLife』はキャラクターのテキストが会話のみで構成されているのでテンポが良い作品なんですが、 しかし「ある氷庫さんの一日……」では地の文を多用していました。 さすがに和っちと氷庫さんの二人のみだと会話のみでストーリーを進行させることが出来なかったらしいです。 ……これではまったくもって『LikeLife』の特色を生かしていません。格段にテンポが悪くなっています。 地の文で和っちの「風邪にヤラれて具合わり〜」という独白を垂れ流されても全然楽しくありませんぜ。

で、エロくない。
まぁこの辺は個人的な趣味嗜好にもよりますが、私はプレイ中に海綿体が膨張することはありませんでした。 ……氷庫さんが元の原画家と違うのもちと違和感を覚えましたね。
なんで氷庫さんによるアナル舐めがあって、フェラが無いんだよう。 生まれてこの方、肛門で性的快感を覚えたことのない私にはどう想像力を巡らせてもアナル舐めの良さは私にはわかりませんでした。 ……アナルオナニー好きなら良いシチュなのかなぁ。

もう一本のショートショートストーリーである「The・LifeRank王国」はTBSのランキング番組をパロったストーリー(?)です。
『LikeLife』の名シーンをランキング形式で氷庫さんが演じるというもの。 CGの書き下ろしはなく、各キャラクターのCGをそのまま流用しています。要は氷庫さんのダルそうな声とのギャップを楽しむものでしょう。
氷庫さんが声を当てている設定なので鬼下手です。……元より氷庫さんの声優さんもあまり上手いとは思えませんけど。 司会が姫子なのでその点は嬉しかったり。「ある氷庫さんの一日……」よりかは好きです。

おまけでは氷庫さんの声優のインタビューと、 「The・LifeRank王国」のセットで一問一答形式で姫子が質問し、 氷庫さんが答えるインタビューです。後者は姫子と氷庫さんの掛け合いがあるのでそこそこ楽しいです。多分。


▼総括

まー、期待以下の内容でしたが、『氷庫版』に付いてきたグッズのことを考えると妥当な値段なのかな。 一時期ヤフオクでべらぼうに高騰していましたが、ホントよくやるよと思いましたね。

サイト内関連:『LikeLife』感想


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