「文々。異聞録」 第34話



 夜明けまでにはまだ時間がある。

  イリヤが去り、柳洞寺には俺と文が残った。
  キャスターから開放された一成や寺に住む僧侶たちも夜明けと共に目を覚ますだろう。
  荒れ果てた境内を見て心を痛めるかもしれないが、人死にがでるよりかはいい。
  それに聖杯戦争を監督する立場の言峰綺礼が後処理をしてくれるだろう。

 イリヤ曰く、ランサーは死んだという。
  残ったサーヴァントはアーチャー、キャスター、バーサーカー、セイバーだけ。
  だとするとこの場にいなかったセイバーがランサーを倒したことになる。
  キャスターも今は生き長らえているが、それも時間の問題だという。

  残るサーヴァントはたった三騎。決戦は近い。

 当面の脅威が去ったの事で緊張の糸が切れたのか、意志とは反して体が崩れ落ちる。
  四肢に力が入らず、このままだと無様に倒れてしまうだろう。  

  この季節に水びたしになったのがまずかった。体温が急激に抜けていく。
  そして、それ以上に葛木から受けたダメージが深いものであった。
  張り詰めていないと立っていられないほどに衰弱していたのだ。

  魔術師でもない相手に不意打ちとはいえ、こうも無様にやられてしまった。
  この聖杯戦争の最中、何度もサーヴァントと遭遇した。
  その度に彼らの実力を目の当たりにし、己の矮小さが酷く浮き彫りになった。
  結果はサーヴァントはもとより、マスターにも手も足もでない体たらく。

  ……何年にも及ぶ魔術の鍛錬は何の意味があったんだろうか。ただの一度も役に立っていない。

 そして、今は情けないことに地面に膝を着こうとしている。
  ……ああ、こんなところ爺さんには到底見せられないな。本当につくづく救えない。

 誰かが倒れ落ちる体をそっと支えてくれた。
 艶のある黒髪が鼻先をくすぐる。俺と同じシャンプーの匂いがした。
  そのシャンプーの匂いに混じって女の子特有の甘い香り。

 今になって気付く。
  イリヤに戦うことを止めさせようとしているのに彼女を矢面に立たせていた。
 俺は銃後に立って傍観しているだけ。戦える力がないことを言い訳にしてだ。
  ――なんて矛盾。
 冷静に考えなくとも自分がどれだけ矛盾を抱えた存在なのかつくづく身に染みる。

 「……なぁ文。俺は間違っていると思うか?」

 少女の小さな肩を借りて、何とかよろよろと歩く。

  「何がですか?」

  「俺はイリヤに戦って欲しくないと思った。
  それは偽りのない本心だ。……だけど、俺はこうして文に戦ってもらっている」

 僅かな間の後、文が落胆したように見えた。

  「ああ、そんなつまらないことを悩んでたんですか」
 「つまらないことはないだろ。俺だって……」

 文が制止するように手のひらを見せる。これ以上は話すなということだろうか。

 「私とイリヤさん同じ物差しで測っても詮無き事です。
  貴方が想像する以上に私は老成していますから。不安定な時期はとっくに終わりました。
  彼女の精神構造も見た目よりは大人ですけど、まだまだ間に合います。何にでもなれます。
  それに比べて私は心が完成してしまったとでもいいましょうか。
  感受性も随分と落ち着いてしまいましたし、感情の起伏もすり減ってしまいましたし、ね。
  そのことを士郎さんは直感で感じ取ったんじゃないでしょうか? 間違ってないと思いますよ」

 彼女の理屈はわかる。だけど感情が納得しない。
  無理強いじゃないにしても、俺は文を戦わせようとしている。
 自分は一切動かずに、だ。俺に戦う力がないなんて言い訳にしか過ぎない。

 それに――。

 「文だってイリヤと同じ女の子だ」

 ピタリ、と。
  文が歩くのを止めた。

 「――あまり天狗を舐めるなよ、人間」

 その聞いたことのない底冷えする声に体が凍てつく。

  文の大きく見開いた赤い瞳が細い楕円形を作り、俺という獲物を捕らえる。
  呼吸が止まる。
  指先一つ動かすことも、目を逸らすことも、そして呼吸さえも許さない。
  ここで変な動きを見せれば、俺は無様に殺される。

  脳裏に浮かぶのは畏敬、恐懼。
 どんな理不尽であろうと弱者は強者に喰わるということ。
  弱さというのはただそれだけで罪。弱肉強食という根源にして絶対の摂理。

  遺伝子の根幹に刻まれた単純にて最も明確な捕食の恐怖。
 ……俺は今彼女を根っこの部分から畏れている。

 数秒が那由多にも思える緊張。まさに俺は恐怖の虜だった。

 「つまりはこーゆうことですよ」

 目の前の存在が顔に笑みを貼り付けた。緊張が嘘だったかのように解かれた。

 「私が言うのもなんですが、見た目なんかに騙されちゃいけません。
   アサシンの言葉を借りるのは少し癪ですけど『人の皮を被った物の怪』――。
  そう思ってくれるのが貴方に取って正しいでしょう。
  ……これで理屈と感情の両方で納得が出来たかしら?」

 思い出したかのようにばくばくと胸が早鐘を打った。
 ひょっとしたらあの瞬間、この鼓動さえも凍り付いていたかもしれない。

 仮初めだが、文に初めて向けられた敵意。
  こんなの人間が耐えられるようなプレッシャーじゃない。
  射命丸文は人々から信仰される英雄こそが初めて立ち向かえる存在なのだ。
 俺のような出来損ないの魔術使いとは立つ土俵が違う。


 「俺が爺さんから託された夢は間違ってないよな……」

 ふと零れた言葉。

  俺は文のことを何度か夢で見た。
  直接聞いたわけではないが彼女もまた俺のことを夢で見ているはずだった。
  こんな事を誰かに訊くなんて俺も相当参っている。

 「そんなの知りませんよ。夢を他人に仮託しないでください。
  貴方の夢でしょう。士郎さんの好きにすればいいじゃないですか」

  ……ああ、全くもってその通りだ。俺はなんと言われたかったんだろうか。
  慰めて欲しかったのか?罵倒して欲しかったのか?どちらにしても決めるのは自分。

  それに他人に何か言われて揺らぐような理想ならば掃き捨ててしまった方がいい。

  文に取っては俺の理想なんて知ったことじゃないし、関心の及ぶものではないんだろう。
 だけど、否定も肯定もしないことが、もしかしたら文なりの優しさかもしれない。

  納得した――。
  この理想が二律背反の板挟みだとしても俺は自分を曲げることはもう嫌だ。
 誰かを救いたいという想いは決して間違いなんかじゃない。
 どんな矛盾を抱えようともこの願いは綺麗で尊いものであることには変わらない。

 「帰りましょうか。こんな濡れ鼠じゃ風邪を引きかねません」

 「ああ、そうだな」

 文は屈託のない笑みを向け、預けた体を支え直すと再び前へ向かって歩き出した。


 ――――――――――


 士郎たちが柳洞寺を去ってから何時間が経過した頃。
 空が徐々にだが白み始め、もうすぐ夜明けとなる時分に差し掛かっていた。

  キャスターを胸に抱えた葛木宗一郎が鬱蒼とした森の中を走る。
 キャスターはフードが脱げ、眉目麗しい素顔を晒していた。
  だが、その美貌は苦悶に満ち、荒い息を繰り返している。
  胸部の酷たらしい傷からは出血が止まらず、点々と大地にこぼれ落ちる。

 円蔵山は中腹に柳洞寺があるが、未だそこまでのルートは未開拓のものが多い。
  特に山を上り下りするには柳洞寺の山門に続く長い石段以外はなかった。
  宗一郎はキャスターを抱え、木々が生い茂るその未開のルートを突き進んでいた。
  薄暗い中、淀みなく走り続けることが出来る宗一郎の身体能力は大したものと言えた。


 バーサーカーにやられた後、キャスターと宗一郎は柳洞寺の傍らで息を潜めていた。
  それは拙いもので、仮にバーサーカーと文のどちらかが探索をしたら見つかっていただろう。
  だが、二組のサーヴァントはソレをせずに自らの足で山を下りた。
 ……瀕死のキャスターに取ってそれは僥倖と言えたかもしれない。

  そして明るくなるのを見計らって二人は下山を試みた。
  だとしても、警戒の強い石段は使えない。他のマスターが網を張っている可能性がある。
  なんの比喩でもなく、本当に今にも消え入りそうなキャスターが
 サーヴァントと遭遇してしまったらそれは確実な死を意味する。
  ならば多少の危険を冒してでも、夜明けを待って獣道を使って下山した方が上計と言えた。

 「……宗一郎様、キャスターを降ろしてください」
 「…………」

 キャスターは何も宗一郎の体を気を遣ったわけではない。
  現にこの男は暗く足場の悪い道を同じペースで息を切らせることなく走っている。  
  キャスターの危惧することは、このまま自分と一緒にいれば宗一郎の身にも危険が及ぶ。

  宗一郎はキャスターの命を救ってくれた恩人だった。
  そして、その行為はキャスターの命だけではなく、心までも救ってくれた。
 裏切りの魔女と罵られたキャスターだが、恩人である宗一郎をこれ以上危険に晒す真似はしたくない。

 宗一郎は答えなかった。もともと寡黙で口数の少ない男だということもあったが。

 「霊核に深い傷を負ってしまったので、どの道もう駄目です。
  ですので、ここで私を捨ていくのが最善でしょう」

 「黙っていろ。舌を噛む」

 宗一郎はキャスターと視線も交わさず、無表情のまま、ただそれだけを答えた。
 キャスターはそれ以上何も言わなかった。だけど心が満たされた。

  もしこの場を脱したとしても、キャスターには緩やかな死が待っているだけ。
  待っているのは確実な絶望。
 だけど――、だけど今だけは宗一郎の胸に抱きかかえられる幸せを甘んじて享受しよう。

  好きな殿方の胸の暖かさを感じて幸福を覚えるなんて――。
  キャスターは考えていた以上に少女趣味な自分に気づきクスリと自嘲を浮かべた。


 「――待ちくたびれたぞ、雑種」

 あと少しで獣道を抜けようとする地点。そこで宗一郎が静かに足を止めた。

 樹木が茂る山中に一人の男が悠然と立っていた。
  黒のライダースーツを纏った金髪の若い男。この場には似つかわしくないあまりにも浮いた存在だ。
  だが、一目見ただけでただ者ではないのはわかる。

 「貴方、何者?」

 男は肉体を持っていたが、その存在感は人間のそれではない。
  体躯はバーサーカーより遙かに劣るこの優男が、それをも凌駕する威圧感を備えていた。
  信じられないことだが目の前に立たれているだけで、へりくだってしまいそうになる。

 キャスターの質疑に忌々しそうな顔を作るが、それも一瞬のこと。

 「我(オレ)に問うのを許した覚えはないぞ。
  だがまぁ我は今機嫌が良い。答えてやろうではないか。
   ……十年前の聖杯戦争で勝ち残ったサーヴァントと言えば充分であろう?」

 その男の口から漏れた言葉は信じられないものだった。
 だがそれは同時に考えるかぎりでは一番納得のいく回答でもあった。
  ならばこの男の言うとおり、聖杯の奇跡によって受肉を果たしたのだろう。

  だが、目の前に現れた理由はなんであろうか。
  キャスターの脳裏には何十もの可能性が導き出されたが、どれも良くないものばかりだった。

  その答えは紅玉を嵌め込んだ様な男の瞳を見て悟った。
  あの目はアーチャーと同等かそれ以上に自分以外の存在を見下している。
  それにキャスターたちがこの世界に存在することさえも許していない。

  だとすると、これ以上は考えるまでも無い。

 「綺礼の狗がセイバーにやられてな。
  それでだ、我が直々に貴様らを殺しに来たというわけだ――。
  ククク、どうも綺礼はランサーが死ぬとは露にも想定していなかったようでな。
  あの仏頂面の男が狼狽える様は、中々に見物であったわ」

 何が面白いのか、愉悦を堪えきれずに声をあげて嗤った。

 「さて、浅ましく生き足掻く貴様らをこの舞台から降ろしてやろう――!」

 明確な殺意を向けられることでプレッシャーが爆発的に膨れあがる。

  そのプレッシャーを浴びて、この男は如何に自分が万全であろうとも、
  決して戦ってはならない存在だとキャスターは悟る。
  彼女のサーヴァントとしての資質が警鐘を鳴らし続けていた。

 今のキャスターは空間転移どころか、簡単な魔術一つもままならない。
  万事休すとはまさにこのことだろう。
  彼女は戦うことは一切考えずに如何にして宗一郎を
  この場で生きて帰すか、その一点のみに聡明な頭脳を使った。

  ……だが、幾ら模索しても答えは見つからない。
  男が気まぐれでも起こさない限りは確実な死が待っている。

  「……ここで待ってろ」

 宗一郎がキャスターを木陰に降ろした。

 「貴方は何をするつもりですか!?」

 童女のように張り上げた声を上げて、宗一郎の思惑を感じ取る。

  「あの男を倒す」

 宗一郎は眼鏡の位置を直し、無感情にそれだけ答える。

 「な――ッ? 私に構わず逃げてください!!」

 「……ハッ、我が逃がすとでも思ったのか?」

 先程まで機嫌がよさそうだった男の眉間に皺が寄る。
  ……この金髪の男は信管のついた爆弾と思えるような危うさがあった。

 「王の前で少々やかましいぞ、雑種ども。
  それにだな、ここは我の手を煩わせず速やかに自害すべきであろう」

 その暴君としか思えない発言にも臆さずに、宗一郎は男と向き合った。

 逃げ切れる可能性は限りなくゼロに等しく。勝てる可能性は更に絶望的。
  だが、キャスターはこの融通が利かないマスターが自分を置いて逃げる姿が想像できない。
  それを想うだけで彼女は胸が熱くなった。
  ――嬉しかった。死に直面しているというのにキャスターは心の底から歓喜した。

  だったら、宗一郎に賭けるしかない。

 「――ご武運を」

  大木に身を預けたキャスターはもう自分では満足に起き上がることも出来ない。
  腕を動かすことがやっと。こうして会話をするだけでもかなりの無理をしている。

 それでもキャスターは残った力を振り絞り、宗一郎の拳に強化の魔術を掛けた。
  僅かに残された寿命を確実に縮めることになろうとも――。
  だというのに、キャスターはそれぐらいしかしてやれない自分が歯痒かった。

  目が霞み、景色はぼんやりとしか見えなかったが、もう関係無い。
  残った五感すべてで宗一郎の姿だけを捉え感じよう。


 宗一郎は拳を構え男に向かって駆け出す。
  ただ愚直に走るのではない。地の利を生かし変則的なフットワークを見せる。
  正中線の揺らぎが無い無音の足捌き。
  だが、男は初めと同じ場所で構えもせず悠然とその場に立ち尽くすだけ。

 それでも宗一郎の何の不安もない。
  彼に出来るのは二十年間もの歳月、暗殺の道具として磨き上げた己の技を使うだけだから。

 宗一郎は自信の絶対的な間合いに踏み込むと、
  予測不能な位置、方向からの左腕を腹部に放った。
 暗殺術『蛇』――。
  その変則的な軌道を持つ拳はサーヴァントとさえも渡り合える徒手空拳の戦闘技術。
  更にはキャスターに強化された拳は鉄板だろうが軽く打ち抜く代物と化していた。

  人体の砕ける音が薄暗い森の中に響いた。


 ――――――――――


 めきょり、という耳に残る不快な音。
  その音を聞いて、宗一郎は勝利を確信した。
  だが、その思考を彼は慢心と断じ、脳裏より消し去る。
  なぜなら暗殺術は対象の息の根を完全に止めて勝利といえるからだ。

  そして、確実なとどめとなる二打目を打ち込もうとした時、その違和感に気付いた。
  息の掛かるような距離にいる男の瞳は何の揺らぎもなかった。
 それに魔術強化された腕から湧き出る鈍痛――。

  砕けたのは宗一郎の左拳だった。

  壊れた拳を確認すると同時に男が金色に輝くフルプレートを纏っていることに気付いた。
  砕かれたのは宗一郎の拳だけで、豪奢な装飾がされた鎧には傷一つもない。

 宗一郎は何が起こったのか理解し得なかった。
  ――だとしても、今は何かを考えるような猶予はない。
  残った右腕を唯一守られていない頭部へと打ち込む。

  しかしそれも予期したかのように男は拳を軽く掴み取る。

 「狙いが些か単純だぞ、雑種。尤もどこを狙おうが徒労に終わるがな」

 宗一郎は壊れた左腕で尚も頭を狙って振るった。それも虚しく空を切る。
  拳が届かなかった要因は左腕の肘から先が斬り落とされ、宙へと舞っていたからだった――。

  男の手にはいつの間にか剣が握られていた。
  黒い刀身が特徴的な両刃の片手剣。それは鎧と同様に宗一郎の知覚することなく顕在していた。

  宗一郎はぼんやりと消失した左腕を眺める。
  血は何故か一滴も流れずに切り口からは見たことのない黒い煙が立ち上がっていた。
 右腕は振り解けない握力で掴まれており、左腕は既にない。
  そして、宗一郎の暗殺術は奇襲によってサーヴァントの戦闘も可能とする技術。策はここに尽きた。

 「この剣は貴様には過ぎた王の宝だ。――精々感謝して死ね」

 男の荒々しい袈裟斬りによって、体が肩口から真っ二つに両断された。

  葛木宗一郎の意識はそこで途絶えた。
 内臓をまき散らすことなく、冬の凍土へと両断された肢体を沈める。
  二度、三度と跳ねるように痙攣すると脈動が止まり、生命の活動を停止させる。

  切断面からは腕と同じように黒い煙が上がり、徐々に血肉を浸蝕していく。
  あと数分もすれば全身をも塗りつぶし、宗一郎の肉体を消滅させるだろう。

  宗一郎は死して尚、表情を一つも変えずにいた。
 もし、この上半身に意識があると仮定して己を死を知ったところで「ああ、そうか」
  ぐらいにしか思わなかっただろうか。それともキャスターに謝辞の言葉を述べたであろうか。

  ――もう誰にもわからない。朽ちた殺人鬼の生涯はこれで終わった。

 「端女、次は貴様の番だ」

 男は宗一郎だったものには目もくれず、キャスターの元へ悠々と歩く。
  キャスターは俯いたまま、ぴくりとも反応を示さない。
  薄く開いた瞳は虚ろであり、どこを見ているかも定かではなかった。

 「…………フン」

 男はそんなキャスターを一瞥すると不満を現すように鼻を鳴らす。
  剣と鎧はどこかへ消え去り、ライダースーツの姿に戻っていた。
  これ以上ここには用はないと言わんばかりに山を下り、冬木の町へ姿を消す。

  ――キャスターは既に事切れていた。

  エーテルで編まれたキャスターの体が空気中に拡散する。
 そして、一刻も経った頃。
  キャスターと葛木宗一郎の二人は痕跡すら残さずに消滅した。

  長い夜が明けた。
  この一夜にしてアサシン、ランサー、キャスターの三騎が落ちる。




 後書き

 ギル様登場の巻。
  ちなみにギル様はこれで二度目の登場です。
  前の出番を覚えているの作者である私だけでしょう。
  彼に似つかわしくない超地味な役所だったし。

 こうしてみるとランサーの扱いが酷いですね。
  最初は彼の死も書くつもりでしたが、とても長くなりそうだったし、
  「Fateでやれ」な内容になりかねないので止めました。
  セイバーと凛が空気だったから、構想だけはあったんですけどねー。
  ……まぁ空気は個性ということで。

 ……と言いつつ、今回の後半もそんな「Fateでやれ」な展開でした。

 余談ですが、Fate本編では主人公組が殆どのサーヴァントを倒していたので、
  このSSの主人公組はそれに反比例するように倒していません。
  四騎脱落して今のところ一騎というのは酷いんじゃなかろうか。

 では、おさらい。

 ライダーは文
  アサシンはバーサーカー
  ランサーはセイバー
  キャスターはバーサーカー

 ……が倒しました。おお、バーサーカー凄いぞ。

 2008.7.25


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